サイバー攻撃のターゲットは、もはや大企業だけではありません。中小企業も「狙いやすい」と見なされ、ランサムウェアやフィッシング詐欺といった攻撃の被害に遭うケースが急増しています。中小企業には大企業と同等のセキュリティ体制を整える余裕がないため、攻撃者にとって格好の標的となっています。本記事では、最新のサイバー攻撃の動向を解説するとともに、中小企業がすぐに実践できる対策を提案します。
中小企業が狙われる理由
- セキュリティ予算の不足
多くの中小企業では、限られた予算が日々の運営に優先され、セキュリティ対策に十分な投資が行われていません。その結果、基本的な防御策さえも欠けているケースがあります。 - 社内IT人材の不足
中小企業では、専任のIT担当者やセキュリティ専門家がいないことが多く、攻撃に対する迅速な対応が難しい状況です。 - サプライチェーンの弱点として狙われるケース
大企業が取引先の中小企業を通じて攻撃される「サプライチェーン攻撃」も増えています。小規模なセキュリティの隙が、全体のシステムに影響を及ぼすリスクがあります。
実例: ある中小企業では、ランサムウェア攻撃を受け、データを復旧するために数百万の身代金を支払う事態に陥りました。攻撃前の状態に戻せることは少なく、復旧にも数百万円の費用が発生することも多々発生しています。サプライチェーンを狙った攻撃では比較的対策が薄くなっている中小企業をターゲットとし、そこから取引先である大企業に侵入していくといった事例も多く観測されています。
最新のサイバー攻撃の動向
- ランサムウェア攻撃
攻撃者は企業の重要データを暗号化し、復旧のための身代金を要求します。中小企業の被害額は平均して数百万円に上り、復旧作業に数週間かかるケースもあります。 - フィッシング詐欺
特にビジネスメール詐欺(BEC: Business Email Compromise)が進化しており、偽装したメールで従業員を騙し、不正な送金を誘発する手口が多発しています。 - サプライチェーン攻撃
攻撃者は中小企業の脆弱性を利用し、その取引先の大企業にも影響を及ぼすケースが増えています。たとえば、ソフトウェアのアップデートを装ったマルウェア配布などが挙げられます。
実例: 直近では毎年数回、大企業だけでなく、中小、中堅企業など、企業規模の大小を問わずフィッシングメールによる攻撃を受け、顧客データが大量に流出した事件が報告されています。このような事件は信頼性の低下や法的措置につながるリスクがあります。また、攻撃者は常に穴を探しており、対策されていなかったり、弱い部分から攻撃を仕掛けてくるので注意が必要です。
中小企業が取るべき具体的な対策
- 基本的なセキュリティ対策
- ウイルス対策ソフトの導入: 定期的なアップデートを行い、最新の脅威に対応可能な状態を維持する。
- 全社員に対するセキュリティ研修: フィッシング詐欺や不審なリンクの見分け方を教育する。
- 先進的な対策
- ゼロトラストセキュリティの導入: 信頼できるデバイスやユーザーだけにアクセスを許可する仕組みを構築する。
- EDR(エンドポイント検知と対応)ツールの利用: ネットワークや端末に侵入した脅威をリアルタイムで検知し、迅速に対応する。
- コスト面の考慮
中小企業でも取り組みやすい低コストの対策として、クラウド型セキュリティサービスの利用が有効です。自社の保有する資産の洗い出しを行い、まずはしっかりとどこにどんな情報をもているか把握してくことが大切です。また、自治体や関連団体で助成やサポートを行っているところも多くあるので、まずは相談してみることも検討してみてください。
まとめと今後の取り組み
サイバー攻撃の脅威は、今後もさらに増加することが予想されます。中小企業は、コストやリソースの制約を考慮しつつ、継続的なセキュリティ対策を講じることが必要です。また、定期的な脆弱性診断やセキュリティポリシーの見直しを行い、最新の脅威に備えることが重要です。
著者

NEWS CyberSecurity 編集長
サイバーセキュリティに関する情報収集を日課とし、初心者に分かりやすく解説することに定評。